ジーザスビジネス


1972年に作られたMarjoeというドキュメンタリーを観た。タイトルのMarjoeとはある宣教師の名前だ。アメリカにおける宣教師とはどういう立場なのか、この映画から少しだけわかった気がする。
Marjoeは両親から教えられなんと4歳で宣教師となった。もちろん史上最年少だ。彼はたちまち有名になり、彼の講演は毎回満員御礼、多くの寄付金を集めながら宣教師人生を続けていた。そしてオトナになったMarjoeはこのドキュメンタリーで衝撃の事実を告白する。
「ぼくが今までしてきたことは全て大嘘なんだよ」
Marjoeはまるでサーカス団のように大きなテントを張ってアメリカ各地をまわり、多くのクリスチャンにジーザスの教えを説いてきた。私は今まで、ブルースブラザーズのジェームスブラウンの出てくるみんなで踊るあの有名なシーンは映画としての演出かと思っていたが、どうやら違うらしい。アメリカではもちろん今でもジーザスを讃える集会があり、それはまさにあのシーンのようなテンションで、ゴスペルの生演奏のなか神のすばらしさに酔い、泣き、踊り、トランス状態でサンキュージーザス、ハレルヤと繰り返し叫ぶ。そしてMarjoeは公演の最後に人々にこう言うのだ。
「あなたが今持っている一番大きな紙幣を神に捧げてください。」
人々はジーザスに感謝し泣きながら段ボールにお金を入れていく。一方、段ボールを抱えているスタッフは集まっていくお金をものすごく真剣に見つめる。目は$マークだ。そして集会のあとにホテルに戻ったMarjoeとスタッフはすぐにベッドの上でお金を数えはじめた。彼が若い頃は、両親が全てのお金を持っていってしまったという。
このドキュメンタリーでは彼の恋人も出てくるが、彼女はもちろん彼がなにをやっているかも知っている。それどころかジーザスビジネス(彼女は彼の活動をこう呼んだ)をとてもよく理解し、そして彼が宣教師の口調で冗談を言うとクスクスと笑うのだ。
Marjoeはこのドキュメンタリーで、自分が悟った神を説いてきたわけではなく、人々を催眠状態にすることによって莫大な寄付金を集めてきた(というより稼いできた)ことを告白したわけだが、その理由がまた、懺悔してかと思いきや“俳優になりたいから”だっていうから腰が抜ける。そして彼は本当に俳優になった。YouTubeで探してみるとなんと特攻野郎Aチームに出演してるじゃないか!しゃべりかたが宣教師のころのままだからもう爆笑。
最後のほうでMarjoeはこう言う。「宗教はドラッグだ」