でも実はたのしかった

ウエンツ瑛士のいまいちパッとしない理由は、あの調子のよさなんじゃないかとおもう。あのお調子者感。あの小物感。
 
最近急に、ホントのメールアドレスに明らかにウィルスとおもわれるメールが来るようになった。急にだ。なんなんだ。私がなにをした。
私もそこまでバカじゃないので心当たりのない添付ファイルをいきなり開いたりはしないが、どっからメールアドレスがもれたのかがすごく気になる。私の知り合いが感染したとかか。なんかキモチワルイ。
 
冬はもっぱらコインランドリーの乾燥機を使ってしまう。今日も洗濯物を持って徒歩20秒くらいのボロ・ランドリーへ行ったわけですが。ガラガラッと引き戸をあけたら暗い室内でおじさんがひとり座っている。洗濯待ちかとおもいきや、洗濯機も乾燥機も一個も動いてない。え?とおもってチラッと顔を見てしまったらみごとに目と目が合い、3秒くらい時が止まった。その3秒で《あぁここでヘタしたら刺されるなぁいやまてよクロロホルムかあぁ携帯もってくるんだった落ち着け私》と考え、なんともない風によそおって洗濯を始めた。
そのあとだ。お金を入れているとそのおじさんが「いま何時くらいかなぁ」と言ったのだ。ビックゥ!とまじで心臓が止まるかとおもったが、《やばい時計持ってないや、いやちょっとまてよあれは独り言なのか?でももし私に聞いてんだとしたらシカトしたらまずいよな刺されるなこりゃ》と瞬時に判断し「あーいま時計持ってないんすよー」と一応返答。そのときまたおじさんの顔をみたらなんだかニコニコしている。私の人間判断アンテナがビビッと働き、たぶんそんなに悪い人じゃないだろうと判定。
そして洗濯物がガーッと動き出し会釈してその場を立ち去ろうとすると「やっぱ冬は乾きずらいからねぇ、乾燥機はいいよねぇ」と話しかけられた。っていうかアンタ洗濯してねぇじゃん!とおもいっきりつっこみたかったが「そうなんですよーつい乾燥機使っちゃうんですよねぇーはやくあったかくなるといいっすよねぇ、でもこれ何回もまわさないと乾かなくないっすか?」とつい言ってしまった。うわ、話つなげてるよ私とかおもいながら、話好きな私の興味はそのおじさんへ向いていた。結局会話はおじさんの持っていたスポーツ新聞のサッカーの話題からはじまり、チャールズとカミラがどうだとか、家賃収入の生活はどうだとか、杉並区のごみ収集の話とか、ホントにどうでもいいことが私の洗濯が終わるまで続いた。途中たばこを1本くれた。ケントなんて初めて吸った。
終わった洗濯物をランドリーバッグにしまい「じゃどうもーたばこごちそうさまでした」と言うと「あーはいはいどうもね」と笑った。そして座り続けている。
軽く会釈して部屋に戻ったが、洗濯物をたたみながらあのおじさんは結局なんだったんだろうと考えた。誰かを待ってるのか?あそこのランドリーのオーナーとかか?もしや霊とか?結局最後まで「ところでおっさん今なに中?」と聞けなかったが、つげ義春の漫画の中にでも入った気分だった。あした覗いてまだいたらさすがに怖いな。